中国はこの30年で奇跡の経済発展を遂げたと言われています。中国のブランド名を思い出せなくても、「奇跡」と共に流行した言葉「GDP」を忘れた人はいないでしょう。
当局のデータによると、中国のGDPは1980年の3000億ドルから2012年には20倍以上の8兆ドル以上となり、20倍以上も増えました。年間の成長率は10%に達します。GDPは2005年にイタリアを超え、2007年にドイツを超えました。2010年には40年以上、世界第二の経済大国を維持してきた日本をも超えました。
江沢民時代からGDPがもてはやされ、その影響は今も続いています。GDPの追求で最大の利益を得たのは、官僚や高官2世、利益集団です。こうして中共はたちまち、世界で最も「資本主義」的な政府になりました。そして、お金を追求することこそ、前向きな生き方なのだという風潮が国中に広がりました。
「土地の囲い込み」は中国の地方政府の主な財源です。地方政府は、土地を売った利益をすべて得られるうえ、土地の売却には立ち退き費用以外、コストがかかりません。その立ち退き費用さえ、土地を売った利益から出せばいいので、基本的にコストはゼロです。
国務院発展研究センターのある報告書によると、ここ数年、地方政府の予算の4割を占めるのが土地の譲渡金、不動産関連の税収です。土地譲渡金の純収入が予算外収入の6割以上を占める地方政府もあります。
2009年、浙江(せっこう)省杭州(こうしゅう)市は、土地売却の所得が1200億元で中国の都市でトップになりました。その年の杭州市の財政収入は550億元だったので、土地売却の収入は財政収入の倍以上に達します。
中共によると土地は理論上、国有あるいは集団の所有なので、「土地の囲い込み」はコストがゼロです。また、中国の新築住宅の値段は土地の価格を含んでいますが、古い家の場合は土地の価格を含んでいません。つまり、庶民が新築の家を買う場合、政府に土地代を払いますが、政府が立ち退きを行う場合、住民に払う補償金には土地代を含みません。つまり政府は土地代を丸々もうけられるのです。しかも、土地代は家の価格の3割から5割を占めます。
上海市徐匯(じょかい)区にある10平米(へいべい)の古い家屋の場合、家主が得られる立ち退き費用は6万5604元です。しかし、この地区の平均住宅価格は2010年、1平米当たり3万8700元だったので、家主が得た立ち退き費用では、同じ地区だと2平米の家すら買えません。政府はこうした土地の「囲い込み」で庶民から利益を奪い、巨額の富を築きました。
かつての上海一の資産家で、2002年、フージワーフの中国富豪ランキングで11位になった不動産業者、周正毅(しゅう せいき)は、もともと飲食業を手がけていました。彼は上海で「最後の黄金地帯」と言われる一等地の開発権を手に入れました。これには、上海市の元トップ、陳良宇(ちん りょうう)の弟、陳良軍(ちん りょうぐん)の援助が切り離せません。
陳良軍も市長だった兄との関係を利用し、土地で暴利を得ました。2002年から2003年まで、上海市宝山(ほうさん)区の土地を得るために、幾度も宝山区のトップに掛け合っていました。そして、この人物が陳良宇に指示を仰いだところ、陳良宇は「規定どおりにチェックすればいい」と同意しました。
こうして陳良宇の弟、陳良軍は600ムーの土地の使用権を得ました。そのあと、この使用権を1億1800万元で開発業者に転売しました。土地の転売だけで瞬く間に、億万長者になったのです。この1億1800万元の費用は、最終的に住宅購入者が負担することになります。
中国の都市の不動産価格は年収の10倍から20倍
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社会科学院と北京工業大学が合同で発表した「2010年北京社会建設分析報告書」によると2008年、北京市の1人当たりの可処分所得は平均2万4725元で、一世帯当たりは平均6万4285元でした。2009年、北京の住宅価格は1平米(へいべい)当たり平均1万7810元だったので、一般的な住宅が90平米だとすると、およそ160万元になります。これは一般家庭の25年分の可処分所得に相当するので、一般的な家庭は25年分の収入がなければ家を買えません。
2011年、北京市や上海市の住宅価格は平均で1平米当たり2万元に値上がりしました。上海市の内環状線より内側は、2010年すでに5万元に達し、北京市の高級住宅市場では、2012年の第一四半期、1平米当たり5万元に達しました。上海市や北京市のホワイトカラーの年収は平均5万元なので、この価格ではとても手が届きません。
これについてあるネットユーザーはこう発言しました。「最近、国が発表したデータによると、北京では300万元も払わないと100平米の家を買えない。金持ちか、高官、あるいは大スター以外なら、どれほどの代価を払うことになるのだろうか」。
1 農民
3ムーの農地しかない場合、1ムー当たりの収入が400元なら、唐の時代から現在まで稼かないといけない。
2 工場の従業員
月給が1500元なら、アヘン戦争から現在まで、土日も休まずに働き続けなければならない。
3 ホワイトカラー
年収が6万元なら、飲まず食わずで休日も休まずに、1960年から働かねばならない。
4 強盗犯
ホワイトカラーをターゲットにして約30年間、2500回も犯行を重ねなければならない。
立ち退き弁公室は、都市の拡張工事を通じて生まれた機構です。家主が立ち退きを望まない時、弁公室は強引に立ち退かせますが、時には武装警察、ひいてはマフィアまで利用して違法行為で住民を追い出します。
大規模な立ち退きは都市から始まり、のちに農村でも行われ、「都市化」の現象は深刻化する一方です。各地の政府は強欲な野獣のように土地の囲い込みと立ち退きで暴利を得ました。結果、多くの村が地図から消え、郷土の文化に異変が生じました。
農民に与えた影響も甚大です。上海の立ち退き被害者弁護団はこう述べています。「農村では、土地の接収で農民が再び貧しくなる現象が広がっている。政府の餌食になった農民は、再起不能の被災者、あるいは陳情受付所を何度も往復する陳情者となるだろう」。
唐福珍(とう ふくちん)さんの焼身自殺事件は典型的な例です。成都市に住む唐さんは強制立ち退きに抵抗するため、2度もガソリンをかぶり焼身自殺を図り、2009年11月29日、病院で亡くなりました。
2011年末、広東省の烏坎(うかん)村では、村の役人が政府の支持の下、勝手に村の土地を売ったため、4000人ほどの村民が警察とにらみ合いました。
無秩序な発展がもたらした不動産バブル その負の遺産はゴーストタウン
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無秩序な不動産業の発展で、中国には「鬼城(きじょう)」と呼ばれるゴーストタウンが現われました。大規模な開発をしたものの、買う人がいないため、空き部屋が大量に現われたのです。
イギリスBBCは2012年3月、内モンゴル自治区のオルドス市を中国最大のゴーストタウンとして報道しました。
20年前、内モンゴル自治区で石炭採掘ブームが起きました。人口150万人のオルドス市に石炭を掘る者が殺到し、たちまち石炭業が発展したのです。地元の農民は土地を売って財を成し、政府の収入も激増しました。そして政府は大胆にも、カルバシ(康巴什區)区に100万人の住民が住める街を造りました。政府庁舎や博物館、劇場、運動場、高層住宅、中産階級向けのメゾネットタイプのマンションから別荘まであります。
新しい街は5年で完成しました。しかし家を買い住む人はわずかで、現在でも人口は1万8600人にとどまります。文字どおりゴーストタウンとなりました。BBCは、「中国の不動産バブルがはじけた場所を見たいなら、オルドス市に来るといい」と述べています。
国有資産の横領こそ中国の官僚が成り上がる手段 江沢民の家族が得た暴利とは?
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中国の30年間の経済発展は、権力の資本化の過程です。広東省の「時代週報」は2009年6月25日、当局の報告書に基づき、0・4%の国民が70%の富を握っており、富の集中度はアメリカを超えると報道しました。
報道では、国務院研究室、中央党校研究室、中央宣伝部研究室、中国社会科学院などの部門が合同で調査した報告書を引用しました。中国では財産が1億元を超える資産家が2006年3月末までで3200人に達しましたが、そのうち、91%の2932人が高官の子女で、総額は2兆450億元に上ります。
2012年12月26日、アメリカの通信社ブルームバーグは、「毛沢東の戦友の子孫は資本主義の成金になった」との長編の記事を掲載しました。鄧小平(とう しょうへい)、陳雲(ちん うん)、楊尚昆(よう しょうこん)、王震(おう しん)、薄一波(はく いっぱ)李先念(り せんねん)、彭真(ほう しん)と宋任窮(そう じんきゅう)の8人の元老の親族、103人が私腹を肥やしている状況を詳細につづりました。この8つの家族は利益が絡み合うネットワークを築き上げ、巨大な紅色貴族の利益集団が生まれました。
しかし八大元老の2世3世は、江沢民の子供に比べれば、たいしたことはありません。江沢民の現職時代、権利とお金の取引はピークに達し、江沢民の家族およびその追随者は、利益を存分にむさぼりました。
http://www.ntdtv.com/xtr/b5/2014/05/08/a1108277.html(中国語)
(翻訳/河合 ナレーター/藤坂 映像編集/李)